半信半疑のだれもが驚いた。
アクが減り、コクが増している。

えのきだけは、工場における瓶栽培によりいまや一年中出回るきのことして食卓の人気者になっている。
横田慎二は、「極みえのき」と銘打って、独自のえのきだけを世に送り出した。
「まさに市場は飽和状態。そうしたなかで抜きん出た値打ちを与えていかないと、いずれ淘汰されてしまう」
そうだ、海洋深層水を試みてみようと、脱塩水を培地に使ってみた。
何度か繰り返してみたけれど、えのきだけは無情にも知らん顔である。
諦めかけたが、ふと、「原水でやってみよう」と発想した。
結果は、「われながら目を疑うほど素早く反応が出ました」
味も歯ごたえもまるきり異なる出来上がり。
家族を始め周囲の人びとが試食し、だれもが驚いた。アクが減りコクが増しているのだ。
「科学的根拠はわかりませんが、明らかにちがうのは事実です」
こうして「極みえのき」は世に出た。
着実に評価を上げ、オランダのバイヤーが強い興味を示すなど、世界の市場にもひろがっている。
「海洋深層水との出会いがなかったら、えのき栽培は続けていたかどうか」。
仕事だからいまもきついことはたくさんあるけれど、20代のとき2年間アメリカで農業研修をしたときの、
筆舌に尽くせぬ過酷な日々が身に染みこんでおり、たいていの苦労は苦労と思えない。
不撓不屈の人である。


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