子どもんころから、海が好き。
魚が好き。室戸が好き。

この日は、出身校でもある元(もと)小学校で「マグロの解体体験会」である。
80キロ級のメバチマグロを前に、ちびっこたちも興奮気味だ。
「地元の子どもに海の魅力を知ってもらいたい。
漁師の醍醐味を伝えたい」と、仲間といっしょに始めたボランティアだ。
竹村正人は、室戸岬水産高校を卒業後、外国航路の船員として10年働く。
高校の機関科で学び、専門はエンジンのエンジニアだ。
「美しかったのはノルウェーの港。治安が良かったのは台湾。
ポルトガルでは船室で熟睡中に現金と時計を盗まれた」と、当時の思い出話は尽きない。
なかでも、妻と知り合った韓国は忘れがたい。
曽祖父の代から船持ちで、父はキンメ漁師。
兄も外国船に乗っていた、根っからの海の男の家系である。
室戸は、「人情味がある。魚がうまい。そして星がきれい」。
海はひとつながり。外国の海を回って、いまは生まれ故郷に落ち着く。
マグロは“はえなわ漁”。近場は千葉や三陸沖から日付変更線のあたりまで、年13回ほど航海に出る。
2,400本の針を付けた“はえなわ”の長さは80キロ。室戸から高知市内まで届いてしまう。
潮の流れを読みながら、1隻6~9人で、長い時は12時間かけて引いていく。

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