定年になってふるさとに帰っても、できる仕事として、伝えていきたい。

標高100mを超える崎山台地(さきやまだいち)は、海成段丘。
隆起を繰り返してきた室戸ならではの地形。台風や偏西風の風当たりが特に強い。
そこで防風林として植えられたのが、椿の木だ。
「100年前から同じ製法だから『百年椿油』と命名し、デザインも一新。
使い勝手もよいから、ふるさと納税お礼の品としても人気です」
と話す山﨑和彦は、集落で椿油を作っているグループの一員。
外での勤めをやめて農業を継ぎ、イノシシや鹿の狩猟にも出張ったりと、一年中忙しい。
椿油づくりでいちばん難しいのは、最後の「沸かし」。
水分を飛ばす微妙な火加減は、ベテランにしかできない仕事だ。
「60代はまだ見習い。若い人は少ないけれど、このあたりには元気な80代も多いです」
「自然が相手だから、その年に採れた実の分しか油にできない」と、
手間ひまはかかるが、重労働ではない。
「定年後に故郷に帰りたいという人もいる。歳いった人もできる仕事として、椿油づくりを残したい」。
そんな思いで作業を続ける。柑橘、いも、お茶そして米も作れる豊かな台地。
究極のスローライフの一番のごちそうは?
「そりゃ、椿油で揚げた天ぷらやね~」。何と贅沢な。

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