コラム

ボランティアガイドの可能性と発展(室戸ジオパーク)

2010年09月07日(火)

建物や自然は何も語らない。文章や写真などで説明されている博物館や科学館においても、人に説明してもらうほうが分り易い。野外の自然や歴史的な建造物であればなおさら、人の関与が重要である。そのため、全国各地に科学コミュケーターやガイドなど、学芸員や研究者とは違う立場で説明に関わる人が増えてきている。

ジオパークにおいても、このガイドの養成が成功の鍵とされている。室戸にも19名のボランティアガイドがいる。ガイドには、岩のことだけでなく、自分達の普段の生活、文化歴史など様々な恵みとジオとの関わりについての知識とガイド技術が必要とされる。大地が形成され、その上に私たちは住んでいる。そして、多くの恵みを受けている。これらを、観光客に体験させたり、発見させたりしながら楽しんでもらい、地域の魅力を知って満足してもらうことがガイドの役割である。

しかしながら、「ジオパークガイドは難しい」というイメージは未だに払拭できていない。このため、ガイド登録をしてもデビューにまでたどり着けなかったり、途中でガイドを辞める人もいるという。これは、「ジオパークのガイド」は地質の専門的な知識が必要と考えてしまうのが原因だろう。知識はあるにこしたことはないが、それほど大事ではない。言い替えるとジオパークガイドは「ジオの恵みの語り部」であり、「専門用語の解説者」ではない。一般の人の目線に立って紹介出来る点ことから考えると、専門家が説明するよりも分り易くなる可能性が高い。

では、良い「ジオの恵みの語り部」とはどういうものなのだろうか。「ジオの恵み」とはガイドが日頃からその土地に住む事によって得られる恵みのことで、自分達がここに住んでいる訳である。ボランティアであるからこそ、この恵みについて自分なりのエピソードでもって語ることができる。地質学的なことや植物、文化の説明にバランス良くエピソードを組み込むことで、語り部となる。さらに、客に何を感じて欲しいのか?そして、どのようにして満足してもらうかというガイドの基本に立ち返ることで、発展が期待できる。

室戸ジオパークのガイドは、誕生から約3年が経った。ガイド養成講座や勉強会を通じて、ガイドのレベルも大きく変わってきているが、まだ不十分であることが、世界ジオパークの国内候補地の現地審査の際に指摘された。来月より、安芸駅〜室戸ジオパークまでのバスとガイドがセットになった「室戸ジオパークパス」が販売となり、多くの観光客がガイドを利用することになる。これをきっかけに、良いジオの語り部として、発展していくと、ボランティアガイドに期待したい。ガイドの向上の先に、世界ジオパークと多くの観光客の笑顔があると信じて。


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