深い海の大きな力に感動する。

室戸岬に海洋深層水研究所が創設されたのは昭和から平成へと元号が移った年だった。すでに企業人として多くの実績を重ねていた竹中幸市はさっそく見学に行った。
深海から伝わるメッセージに計り知れない魅力を予感したからだが、ふと海岸に目をやり強い衝撃を受ける。若いころから貝を採りに潜っており馴染みのある海岸。なのに、海草が見違えるほど生命力にあふれていたのだ。
「研究のために海底深く汲み上げた深層水を、そこからふたたび海中に還しているために生じた現象と知りました」
つまり、深層水の底力の証明をその目でしかと見届けたのだった。
太陽の光の届かない海底を果てしなく移動する水。生命の故郷であることのあかしのように生物に有益な微量元素を豊富に含む水。
「人の身体にかならずいいものだと確信を持ちました」
大手清涼飲料メーカー・ダイドードリンコ株式会社との固い信頼関係のもとに海洋深層水の飲料を世に送り出したのは2000(平成12)年。
さらに、高知大学との協同研究によって、農産物、海産物などさまざまな分野への可能性を模索していった。
土佐人らしい「いごっそう」である。
この世で決して許せないのは、と尋ねられれば、「怠けること、ずるい考え」
と断言する。が、その頑固と気骨を底で支えるように、大きな寛容が
あふれているのを周囲の人はよく知っている。

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