室戸に寄り添って、1世紀。
いまは、明るい夫婦割烹です。
土佐清水生まれの妻と室戸生まれの夫。
ふたりが出会ったのは高知市内の高校だった。
「社会に出ていちばん先にしたかったのが結婚」
という友だち夫婦は、銀婚式を過ぎてもフレッシュだ。
酒屋、おでん屋、そしてマグロ船で賑わった時代に料理屋へ。
室戸の景気に合わせて店の業態を変えてきた。
3代目の松田昌丈が都会の大学を出て実家に戻ったのは、1989年。
板場さんや祖母、母の仕事を見よう見まねで覚えた。
バブルの名残りのその頃は宴会も多く、若いふたりも無我夢中の数年だった。
そこから10年で室戸もずいぶん変わり、いまでは夫婦で切り盛りする割烹に。
「なによりもお客様との会話が楽しい」と、料理の希望など聞きながら、
お客様と向き合って一品ずつ提供するスタイルだ。
「味の好みは人それぞれ。おいしいと言ってもらえるのは奇跡です」
その奇跡を起こすための工夫はいとわない。
反応を逃さないよう毎回真剣勝負だ。
「教育をつけたい」を最大の目標に県外へと送り出した子どもたちも成長し、
「ふたりでコントロールできる規模でベストを尽くす」
いまのスタイルに落ち着いた。
お客様は地元の常連さんや盆暮れの帰省時に代々寄ってくれるお馴染みさん。
この商売も出会いですね、と話を向けると、妻は「はい、そのとおり!」とうなづき、
「私は、若い時、早くにいい人と出会った…ということにしておく」
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