コラム

炭をつくる男たち

2011年12月14日(水) ジオな人文化と歴史

 

先日室戸市吉良川で、土佐備長炭の窯に備長炭の原材料となる樫をくべる様子を見学させてもらいました。吉良川は土佐備長炭の交易で栄えた町の一つで、その地での備長炭作りは明治時代から続いています。

備長炭は季節関係なく、一定のサイクルで生産されています。今回見学させていただいたのは、炭焼きの一連の工程の中の「窯くべ」と言われる作業です。

炭窯の両端には、その日にくべるための原木が並べられていますが、窯の中での乾燥の具合や、くべる順序などを考えほぼ均一の大きさに切りそろえられています。

窯の全体像。両端に原木が置かれています。

 

 

原木には、樫やうばめ樫が使われます。山で伐採されたものですが、今では買ってくる場合もあるらしいです。

それらの原木は、窯の上方側面に空いている計8個の穴(バイ)から、すきまを埋めるように重ねながら入れらます。適当に投げ入れるのではなく、窯の中で乾燥のために必要な気流が生まれるようにきちんと計算されています。そのため、窯の中の原木はきれいに整列されています。

窯の中に並べられた原木

黙々と、しかし計算しながら木をくべる

 

すべての原木を入れ終わるまでに、約4時間かかると言います。窯付近の温度は非常に高く、時には風の流れで顔や体に高温の熱風がふきかかります。窯の周りで10分も作業をすると、冬でも汗が噴き出ていました。みなさん原木をひょいひょい持ち上げて次々と木をくべていましたが、実際に持ってみると非常に思いです。熱さだけでなく、足腰も丈夫でないといけません。黒岩さん(息子さん)によると「使う筋肉が違う」ということです。夏の作業は本当に体力が勝負になってくるそうです。

みんなで木をくべます

 

 

窯の中が原木でいっぱいなると、乾燥の工程に移ります。窯くべ後、原木を1日窯の中で寝かした後に、窯に点火します。すると窯の上部にある穴からは、多くの水蒸気が出てきます。これは木から出る煙ではなく、水分が蒸発したことによって生まれる水蒸気です。最終的に木の直径は、3分の1程度にまで小さくなり、重さは10分の1くらいにまでなります

窯上部の穴から噴き出る水蒸気

そこで炭化が始まります。

 

今回は窯くべのみの見学でしたが、後日窯出しの様子も見学しに行く予定でいます。痛いくらいの熱さが体験できるらしいですが、今から楽しみです!

 

黒岩さん(お父さん)は、作業中色んなお話しを聞かせてくれました。印象的だったのは、

「熱うて大変やけど、タイムカードを押して仕事に行って・・・っていう風に時間に縛られてない。体を動かせて本当に気持ちがいいわ。この仕事にはストレスがないし、ほんまに楽しいわ。」

という言葉。その言葉通り、その日窯をくべていた5人の男衆は、真剣でありながらも冗談を言い合って時には笑顔を見せながら、本当に楽しそうに仕事をしていました。胸を張って自分の仕事が好きだと言えるのって、素敵です!

現在では備長炭をマドラーなどに加工して、おみやげものも作られています。若い人や室戸市外の人にも備長炭の文化を知ってほしいとの、熱い思いが伝わってきました。

私は室戸で生まれ、高校卒業まで室戸で暮らしていましたが、吉良川で受け継がれていた備長炭作りについてまったく知りませんでした。しかも案外近しい人たちが、そうした伝統産業に携わっていたとは驚きでした。炭窯は間近で見ると、迫力が違います。最新技術を駆使したものではありませんが、人間の知恵を活かし、どうすればいい炭ができるのか、ということを考えて炭窯や炭焼き小屋は設計されています。備長炭1つとっても、原木だけでなく窯を作る土、乾燥のために気候を考慮するなど、自然の中で生きてきた「室戸もん」の歴史を知ることができるんだなと痛感した日でした。

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